今週はまったくタイプが真逆と言っていい映画を2本観た。
1本目は『釣りバカ日誌』。WOWOWの無料放送でチェック。松竹の人気シリーズで計22作まで作られた。
もともと寅さんの『男はつらいよ』との2本立てでスタートして、人気が出て続編が作られて後に松竹の看板作品になった。私は1作目のみが好きで、他の作品はほとんど観たことがない。この1作目にすべてのキャラクターの魅力や人間関係がきっちり凝縮されていて、この1本で「釣りバカ」の魅力のすべてカバーするくらいバランスが取れている良作だ。
もちろん原作である漫画の登場人物たちのキャラクター設定と映画でのキャラクター設定は、一部脚色上変えられていたりしますが、私はあくまで映画の1作目をお気に入りとしています。
主人公の“ハマちゃん”こと浜崎伝助は私の憧れ。人にやさしくおおらかで、いつも周囲を明るくする。仕事にガツガツせず、まったく出世に興味が無い(だから釣りの“相棒”になるスーさんが勤めている会社の社長だということすら知らないのだけれど)。愛妻家で奥さんはきれいでハマちゃんと一緒で優しくて気立てが良い。ハマちゃんはいつも大好きな釣りの事ばかり考えている。こんな人生送れたらうらやましい。私も出世欲のまったくない人間だったけど、ハマちゃんほどおおらかになれないから、どうしても無い物ねだりになってしまう。
松竹だからキャストは派手じゃないんだけど、西田敏行と三國廉太郎のコンビは絶妙だし、奥さんの“みち子さん”の石田えり(1〜スペシャルまで)も健康的な美しさでベストなキャスティングです。脇役の上司の谷啓、OLの戸川純、山瀬まみなどもうまくはまっている。映画公開が1988年だから、まさにバブルの入口。映画の中のオフィスでは社員は喫煙しているし、登場人物の喫煙率がとても高い。バブルの頃で世の中景気が良いから、ハマちゃんみたいにノンビリしている無気力風社員も一定の存在感が当時の世相と合ったのかもしれない。
この作品、山田洋次が脚本を担当しているが、さすがに笑いどころと泣き所をしっかり押さえていて、安心して楽しめる今や私の癒しの1本である。こういう映画、最近ないなあ・・・

そしてもう1本、『釣りバカ日誌』と真逆のタイプである『東京難民』。
公式ホームページ
TVや雑誌等メディアでは、ドキュメンタリーやニュースで、何回も「ワーキング・プア」とか「ネットカフェ難民」を取り上げたりしていますが、この作品は普通の大学生がふとしたきっかけで大学を除籍になり、住んでるアパートを追い出され、ネットカフェ生活を余儀なくされて日雇いバイトからホストになり、そこで事件に巻き込まれて逃亡生活を経てホームレスまで転落する“わずか半年間”をスリリングにジェット・コースター的に描いた社会派作品です。
監督は『陽はまた昇る』『半落ち』の社会派、佐々部清。いま日本にはびこっているTV局系低俗メディアミックス映画とは完全に一線を画した超硬派な作品に仕上がっていてこれはお薦め。
今の日本の社会に対する痛烈なアンチテーゼも多く含まれていて・・・例えば一度社会で失敗すると中々取り返しがきかないとか大学出て正社員になれないと一生なれるチャンスが少ないとか、そういう若者に対するセーフティ・ネットが欠落していることとか・・・そこではじき出されると今度は彼らをビジネスにする社会勢力から更に搾取をされて、また一段人生が転落してしまうという不条理な構図がシリアスに描かれている。
主人公は親の失踪で大学の学費やアパートの家賃が未納となって、機械的に当たり前のように存在したコミュニティから追い出されてしまう。このケースは、就活とか以前にドロップアウトしてしまうという悲惨なケースなのだが、その後彼がたどる日雇いのバイトや治験のバイトやホストに至るまで資本主義の需給が巧妙に張り巡らされていて搾取する側とされる側の構図がリアルで恐ろしい。
ただひとつ主人公は困窮極める中で、一度も公的な機関に相談に行かないのは???なところもあるのだが、そこを描くと生活保護にフォーカスせざるを得なくなるので敢えて触れなかったのかなとも思いましたが。
主人公役の中村蒼が好演。サブキャストも適材適所で良いキャスティングです。
バブル時代の『釣りバカ日誌』、失われた20年後の『東京難民』。バブルを知っている世代としては、今の時代の怖さをひしひしと感じました。
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