昨年の30年ぶりのセルフリメイク公開から約一年。日本映画チャンネルでのCS放映となった。個人的には角川映画マニアであり、金田一映画ファンであるので、昨年の公開は初日に観に行ったほど。今回の「犬神家の一族」にしても、おそらく監督の強い意志でのリメイクではなかったと思う。市川監督は前作のトヨエツ版『八ツ墓村』でも、クランクインで初めてトヨエツと会ったというエピソードが裏付けるように、もはや自分のキャスティングや演出で作品を撮れるご年齢ではなく悲しいかな、昨今の邦画の商業主義的な映画戦略に晩年を委ねてしまっているように感じてならない。
結果、オリジナル版を超える作品にはなるわけもなく、ファンからしてみれば何で今この作品をリメイクしたんだろう、ということになってしまうのだ。
リメイクで失敗してしまう最大の原因はミスキャスト。今の旬な芸人や俳優をどうしても話題性重視で起用したがるが、結果それが映画全体を台無しにするケースが多い。特にこの作品は、重厚な人間群像劇だから、一人でもキャスティングをミスるとすべてが台無しになる。オリジナル版は、完璧だった。本来結髪さんであるカズさん(沼田さん)でさえ最高の演技を見せてくれる(後に準レギュラー出演し、主に三木のり平との夫婦役が多かった)。以下、今回のミスキャストをリストアップしておこう。

A級戦犯
●萬田久子 ・・・ 『八ツ墓村』で実証された大根ぶりを更に進化させた。特に息子を殺された後の半狂乱のシーンは、まったく無感情。これ以上、ひどい演技はないだろう。
●葛山信吾/池内万作 ・・・ オリジナル版の地井武男、川口恒がエネルギッシュに演じた「ギラギラした遺産ゲットしてやる」という欲望の塊感の全く無いただの馬鹿息子ぶりだけが目立った二人。

B級戦犯
●富司純子/尾上菊之助 ・・・ 単なるマザコン映画にさせた罪は重い。セリフ回しも貫禄が全くなし。話題性だけで沈んだ二人。
●松嶋菜々子 ・・・ この役に必要なのは“処女性”。プライベートで結婚して出産した彼女には無理です。イメージが合いません。

唯一の救いは、深田恭子と奥菜恵の健闘。イメージはオリジナル版に近かったと思う。

石坂浩二、加藤武、大滝秀治の三人は、お年をめされてとても「いい人」になっていた。キレというよりは優しさすら感じさせてしまうのは、時間がそうさせたのだろうか。