E_D
自民党総裁選や新内閣を報じるニュース番組等の茶番ぶりがあまりにひどく、ただでさえ見なくなっている地上波からBS/CSの映画専門チャンネルへ逃避している今日この頃。そんな中、シネフィルWOWOWで『エグゼクティブ・デシジョン』(1996年)をオンエア。当ブログでも何回か紹介している作品で、「おすすめのアクション映画は?」と聞かれると私は必ず薦める1本です。何度も観ているのに、見始めると吸い込まれるかのように最後まで視聴。久しぶりに観ても面白い作品ですね。
私事ですが、年を取るにつれて文章を書く、まとめるというのが日々苦手になっていくのを実感しています。たまに今回のように好きな映画について書きますが、自己の訓練も兼ねており長文をお許しください。

1.作品について

■あらすじ
アテネ発ワシントン行きの旅客機”オーシャニック航空343便”がテロリストによってハイジャックされる事件が発生。テロリストは、指導者の釈放を要求するが、真意が読めない。テロ対策分析専門のグラント博士は、機内に大量化学兵器である神経ガス爆弾が持ち込まれていると予測し、真の狙いはワシントンを含む東海岸一帯の壊滅であると主張。神経ガス爆弾の確認と解除及びテロリストの真意を探るため、ペンタゴンはトラヴィス中佐の指揮のもとステルス型の救出機(リモーラ)をジャンボ機に空中でドッキングさせて、敵に気づかれずに空中から特殊部隊を潜入させる奇想天外な”最後の賭け”に出る。ドッキングには無事成功するが、いざ潜入の段で乱流に飲み込まれるあたりから予期せぬトラブルの連続。その過程で、部隊のリーダーであるトラヴィス中佐(セガール)が”退場”!!なんとか潜入には成功したものの、残されたメンバーは本部との連絡が取れないまま、限られた武器と機器のみで窮地に立たされる。潜入の有無が確認できないペンタゴンは、最後の手段としてジャンボ機が米国領空に入る前にアメリカ軍に撃墜させるための”エグゼクティブ・デシジョン(最終決断)”を大統領に求めた。
■作品のポイント
1.セガールのまさかの”途中退場”
いちばんのポイントは、セガールが序盤で消えてしまうこと。”智(インテリジェンス)”のラッセル、”動(アクション)”のセガールが組んでテロを制圧、セガールの八面六臂の活躍を予想していた観客を見事にミスリードすることに成功したことにあります。完全無欠のヒーローが突然いなくなることで、事態解決のため正義感の強いCAや機内に偶然搭乗していた保安官など全員が一致協力するという図式が生まれて、予想がつかないハラハラドキドキの展開がラストまで続きます。
2.伝統的な作り方と仕掛けの面白さ
映画の基本的な作り方のひとつにオープニングにヒントが与えられていて、それがラストにつながるという定石的なシーンが本作にあります。オープニングで主人公グラント博士(ラッセル)は、趣味でセスナ機の飛行訓練を受けていますが、いざ単独飛行の実地訓練に入る直前に本部に呼び戻されます。そんな彼がラストでは見事に”単独飛行”の実戦を経験することになるのです。「自信を持て」「基本に忠実に」の教官のメッセージが最後に生かされます。
このほかにもテロ制圧と並行して神経ガス爆弾の解除に主人公たちは悪戦苦闘します。二重三重のフェイクの仕掛けが張り巡らされて、果ては乗客の中に起爆装置を操作する謎の爆弾係が紛れ込んでいるという困難をどうクリアしていくのか、また通信装置の無い状態で彼らはどうやって自分たちが機内で戦っていることをペンタゴンに伝えるのか、このあたりのアイデアも見どころでしょう。
3.秀逸なコピー
以前の仕事でビデオやDVD、ブルーレイ作品のコピーを何本も書きましたが、この作品のキャッチコピーは素晴らしいものがあると思います。作品のイメージ、本質を見事に表現しています。
“怖さ、ファーストクラス”(公開時コピー)
“スリルと興奮の乱気流。シートベルトを締めろ”(-Pat Collins, WWOR-TV)

2.スタッフ&キャスト

■キャスト
カート・ラッセル : デヴィッド・グラント博士(陸軍情報部顧問)
ハル・ベリー : ジーン(CA)
ジョン・レグイザモ : ラット(特殊部隊)
オリヴァー・プラット : デニス・ケーヒル(軍事技術研究員/救出機"リモーラ"の開発者)
ジョー・モートン : キャピー(特殊部隊・爆弾処理担当)
デヴィッド・スーシェ : ナジ・ハッサン(テロのリーダー)
B・D・ウォン : ルーイー(特殊部隊)
スティーヴン・セガール : オースティン・トラヴィス中佐(特殊部隊のリーダー)
マーラ・メイプルズ・トランプ : ナンシー(CA)
■スタッフ
監督 : スチュアート・ベアード(『追跡者』)
製作 : ジョエル・シルヴァー(『ダイ・ハード』シリーズ等)
音楽 : ジェリー・ゴールドスミス(『オーメン』等)

 映画のオープニング・クレジットで登場する主要キャストの順番は、だいたいこの流れです。なぜかここではスティーヴン・セガールの名前が出てこないが、エンディングロールでは、カート・ラッセルの次に出てきます。このあたりがミソでもあるところ。ちょうどこの順番が、劇中でのポジションというか活躍の度合いになっていますね。セガールのことは後述するとして、TV版名探偵ポワロを演じたデヴィッド・スーシェが冷酷なテロリスト役というのが一興でこれが作品を面白くさせている。トランプ大統領の前夫人のマーラ・メイプルズ・トランプ(当時)がハル・ベリーの同僚のCA役で出演。この方も美人さんです。ほかにもテロリストの指導者役のアンドレアス・カツーラス、保安官役のリチャード・リールは、映画『逃亡者』にも出ていて当時のワーナー作品の俳優という印象が残っている。
 監督のスチュアート・ベアードは、元は編集のベテランで本作が初監督。132分という長尺ながら、物凄くテンポよくまとめているのはキャリアの裏打ちでしょうね。製作は『ダイ・ハード』のジョエル・シルヴァー。スカイ・パニック版『ダイ・ハード』を狙ったのか、エンディングは『ダイ・ハード2』のパロディではないでしょうか。

3.エピソード

 この作品は観るとわかりますが、カート・ラッセル主演の映画です。ところが日本も含めて一部の国のキーアートにはラッセルとセガールのW主演風のデザインが採用されています。本作はセガールにとっては『沈黙の戦艦』『暴走特急』に続く作品であり、よりアクション色を出して宣伝したいという配給側の狙いと映画公開時の損失(洋画の大半は赤字が多かった)をビデオ等の二次使用で回収するためにセガールを主役級に見せて売上アップを狙ったビデオ会社の意向によるものだと考えられます。のちにブルーレイが国内で発売された際には、オリジナルのラッセルのみのキーアートに戻っています。本作は私のようにコアなファンは一部にはいますが、ビデオ会社の中ではあまり扱いが良くなかったようでDVDもブルーレイも映像特典がたくさん入った”特別版”のようなバージョンはまったく発売されず、すぐに廉価版になってしまうライフサイクルを歩んでいます。
 私としては、2014年の新宿ミラノ座閉館に伴う記念イベント「新宿ミラノ座より愛をこめて~LAST SHOW~」で本作をスクリーンで観ることができたことが何よりの思い出となりました。

4.ソフト情報

DVDもブルーレイもいわゆる廉価版シリーズとして発売中です。ブルーレイ版のキーアートがオリジナルのカート・ラッセル単独バージョンで格納庫のところの絵だというのがわかります。
VODの時代ですから、amazon Prime VideoやU-NEXT等でも視聴可能です。
 

★ライフヒストリー「私の軌跡」: 大切な人生、消えない想いを残しておきたい!★

横長バナー3